本の庭

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沖縄02

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沖縄県北西部にある今帰仁村屋我地島と古宇利島を結ぶ古宇利大橋は、絶景スポットとしてインスタグラマーにも人気の観光地です。

 

エメラルドグリーンの海の上に続くこの橋は、たとえ曇っていても美しく、晴れている日は特に綺麗な写真が撮れそうです。

 

この古宇利大橋には、屋我地島から橋を渡り始めてすぐのところに、なだらかなふくらみがあります。

 

それは橋桁下を漁船が通航するための勾配ですが、緩やかな勾配はあまり傾斜を感じさせない程度のふくらみであるため、運転も快適であり、また速度が出すぎないので安全でもあります。

 

ところで、古宇利島にはさしあたりもうひとつ、ふくらみがあります。

 

それは島そのものです。

 

ほぼ円形状の島には中心に向かってなだらかな勾配があり、それは海からふくらみ上がった様なお碗の形状をしています。

 

この島のふくらみには何やら安心感を持ってしまうのです。

 

さて、辻の街を彷徨った翌朝、沖縄到着後に初のお日様を拝みました。

 

朝食を済ませ、レンタカーショップに行き、レンタカーで今帰仁村(なきじんそん)に向かいました。

 

那覇から今帰仁までのおよそ1時間半の車内では沖縄音楽をかけ、沖縄ワールドに没入します。

 

道中の許田というところの道の駅に寄り、じゅーしーという沖縄の炊き込みご飯のおむすびとモズク天ぷら、サーターアンダギーを購入しました。

 

モズク天ぷらというのは沖縄のB級グルメといったところでしょうか。

 

モズクといえばモズク酢のイメージが強く、あれはほぼ酢の味しかしません。

 

ですが、酢に浸さないモズクってどんな味がするのでしょうか、気になります。

 

ランチは古宇利島で食べることにしていたので、買い物を終えて自動車に戻り、いざ今帰仁村は古宇利島へ向かいました。

 

この古宇利島、名前は「恋島」に由来すると言われています。

 

島の北部にハートロックというハート型の対になった岩があり、それがもとになって古宇利島のアダムとイヴとも言われる人類発祥伝説が生まれました。

 

それによると、男女二人の子どもがこの古宇利島に暮していて、彼らは天から降ってくる餅を食べていたそうです。

 

ある時、そのお餅を無駄にすることなく保存することを覚えると、お餅は降ってこなくなったので、それからは魚や貝を捕ることで食べ物を確保していたんだそう。

 

また、ある時にはジュゴンの交尾を見た二人は性別の違いを知り、それからクバの葉で股間を隠すにしたのだといいます。

 

こうして保存と衣装の概念が生まれ、二人の子孫によって受けつがれていったということです。

 

古宇利島に到着しました。

 

古宇利島は、車で10分程度で回れる小さな島です。

 

橋を渡ってすぐのところにあるビーチ近くの無料駐車場に車を停めて、近くにあったベンチでランチにしました。

 

モズク天ぷらは美味しかったのですが、モズクそのものの味はいまいち分かりません。

 

モズクって調理せずに食べたらどんな味がするんでしょうか。

 

ランチを済ませてから、少しビーチの辺りを散歩しました。

 

この日は朝から曇っていたんですが、ここにきて雲行きがあやしくなってきました。

 

曇っていると、ビーチも少し寒々しく感じます。

 

ハートロックまでビーチ沿いに歩いて行けば到着すると聞いたので、ビーチ沿いに歩を進めながらこの古宇利島の人類発祥伝説について少し考えました。

 

伝説に出てきた島に暮らす二人はジュゴンの交尾を見たということでしたが、性別について認知することから股間を隠すことへ繋がる話には飛躍があるのではないかと思います。

 

交尾は極めて自己破壊的です。

 

それは自己身体が他者身体と交雑することで自己と他者の境界を破壊する行為で、その様な自己破壊を享楽する快感から距離を置き破壊を防ぐためにその象徴的な性器を隠すのではないかと思います。

 

すると、交尾を見た二人は恐らく性交渉を行うことによってその快感(ないし自己破壊)を知り、股間を隠す様にしたのではないかと考えるほうが自然ではないでしょうか。

 

他方ではお餅が降ってきて保存を覚えたということでしたが、お餅は実際には降ってきません。

 

いったい何が降ってきたのでしょうか。

 

伝説によれば、お餅は二人が保存を始めてから降ってこなくなったということでした。

 

つまり、二人がその保存を始めなければ、ずっと降って来ていた可能性も考えられます。

 

このことから、この天から降るお餅は二人の子どもたちを育てた母が与えた乳の隠喩として捉えられます。

 

母乳は離乳後に徐々に量が減っていきます。

 

子どもたちが降ってくる餅を保存し、また別の食べ物を採集することを覚えるのは、つまり離乳するということではないでしょうか。

 

離乳することで次第にお餅(=母乳)は降ってこなくなった、ということです。

 

天から母乳を降らせていたこの島は、とても乳房的な島です。

 

琉球の人類発祥神話の二人の子孫が今日の人類ということになりますが、すると人類は二人の誕生以降に大きく成長してきたことになります。

 

そんな古宇利島にはもうお餅は降ってきません。

 

ですが、島には雨が降ります。

 

2月の沖縄は雨が多いのです。

 

雨が降ってきました。

 

グーグルマップによれば、ビーチを歩いていてはハートロックに辿り着かないことが分かったので、車に戻ることにしました。

 

ハートロックは島北部にあるということだったので、雨が強くなる前にと車で急いで向かいました。

 

5分ほど走るとハートロック観光のための有料駐車場が見えてきました。有料なんですね。

 

そして雨が強く降っています。

 

対になった岩を見るといっても、ほんの数分のことでしょう。

 

この強い雨の中、わざわざお金払って見に行く必要があるでしょうか。

 

というか、外に出たくない。ハートロックはあきらめよう。

 

ハートロックを見るために駐車場料金を支払って車を降りることをあきらめる決断を私は迷わずしました、雨が降ってきたことを口実に。

 

この雨は母乳ではありません。

 

なだらかな島に吹き付ける雨です。

 

雨は私が財布からお金を支払うことを止めて、蓄えることを選択させました。

 

なんということでしょう。

 

島を出ると雨は弱くなりました。

 

古宇利島は今帰仁村ですが、この今帰仁村の安全運転を啓発する看板文句に「なきじん 美人多し わき見注意!」というものがありました。

 

ユーモアのある文句ですが、美人は一人として見ませんでした。

 

雨は古宇利島のハートロックだけでなく、なきじんの美人まで隠してしまったのでしょうか。安全な運転のために……。