本の庭

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東京・渋谷01

渋谷駅周辺はどこもかしこも再開発の真っ只中です。

 

駅南西側にある桜丘という街もまた、再開発の準備が進んでいるようです。

 

そんな渋谷の街を歩きました。

 

渋谷・閉店店舗

お昼時の土曜日の渋谷に到着しました。

 

地下鉄の駅は人でごった返していて、改札を出てから2018年9月にオープンした渋谷ストリームという高層ビルの方面に向かいました。

 

渋谷ストリームは、アーバンコアと呼ばれる地下・地上・ビル低層階までの縦動線によって地下鉄までの地下通路と結ばれています。

 

アーバンコアを利用して地上に上り、JR線路下をくぐって桜丘の街に到着しました。

 

桜丘の街中ですぐに目に入るのは、ビルに貼られた移転先の案内の数々です。

 

時折荷物を運び出す人が建物から出てくる以外には歩行者が町を通り抜けるだけで、辺りは閑散としていました。

 

桜丘はまさに、閉じようとしています。

 

この閉じていく街の中を歩くと、淋しげな雰囲気が漂っています。

 

街の景色、音、香りが知覚され、その情報は神経を通して脳に伝達され、再開発が行われているという情報と接続されることで閉じゆく街に淋しげな雰囲気を感じるのだと思いました。

 

しかし、雰囲気はその様に解釈されるだけの空間において認識されるファクターというわけではありません。

 

雰囲気というものが存在し、その一端を私たちの身体を媒介して神経が捉えるのだろうと思いますが、捉えきれない雰囲気もまた存在しています。

 

それはたぶんティモシー・モートンのいうエコミメーシスの議論に繋がっていきます。

 

閉じていく街は間もなく解体され、巨大建築物へと姿を変えていきます。

 

そこで新たな街の雰囲気が作られるのでしょう。

 

それから、他の再開発の工事現場周辺を回りながら渋谷駅前スクランブル交差点に向かい、その正面にあるスターバックスに入りました。

 

店内は勉強をする高校生や仕事をする若者もいる一方で、海外からの観光客が多くて、多言語が交錯していました。

 

スクランブル交差点の様子が見える窓際のカウンター席は欧米からの観光客で埋め尽くされていました。

 

おそらくこのスクランブル交差点を渡る大勢の歩行者を映した映像がテレビやSNSを通して度々観光客の目に入るのだろうと思います。

 

中間媒体を通して構築されたイメージがまさにここで消費され、更なるイメージを構築する映像となってSNS上に氾濫することになるのでしょう。

 

美しい景観を求めて旅行をする観光客が写真を撮るとき、写真に目的の景観以外に通行人が入ることを避ける人も少なくないと思います。

 

でも、スクランブル交差点は人が通らなければ目的の光景は映りません。

 

ここでは、通行人は排除される対象ではなく観光される対象そのものです。

 

スクランブル交差点は、利用者と観光客が入り乱れて生活空間と観光空間が同時に発生した混成的な空間を形成していえるでしょう。

 

通常、観光のために作られた空間は、観光客が求めるものをつくり出すために元来の利用用途が喪失される場合が少なくありません。

 

典型的な例をいえば、城です。

 

元来の利用用途は、一定エリアを統治する統治者の住いでした。

 

現在は、観光客が城に訪れて、その城の構成や歴史なんかを関心の有無にかかわらず与えられたりする場となっています(かつての王政時代には主君が城に定住していたのに対して、今日の資本主義の時代に置いては観光客が一時的なノマド的に城を訪れるというのは時代の変遷が良く見てとれます)。

 

ですが、このスクランブル交差点では、元来の利用用途における利用と観光が同時に可能です。

 

だから、スクランブル交差点は常にレンズの先にあるのです。

 

スターバックスを出てからセンター街を抜けてNHKの方まで歩き、NHKから引き返して今度は駅東口に出て、ビールを片手に歩きました。